沖縄 科学 技術 大学院 大学 学園。 沖縄科学技術大学院大学、独創研究で「東大超え」 (2ページ目):日経ビジネス電子版

現在までの経緯:沖縄政策-内閣府

沖縄 科学 技術 大学院 大学 学園

沖縄科学技術大学院大学(OIST:Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University)について 前内閣府大臣官房審議官(沖縄政策担当及び沖縄科学技術大学院大学企画推進担当) 渡部 晶 はじめに 沖縄が本土に復帰して、45年が経過した。 現行の沖縄振興特別措置法に基づき沖縄県が策定した沖縄振興計画は、平成29年で5年が経過した中間年となる。 それにあたり、沖縄振興策を調査・審議する、内閣府に置かれた沖縄振興審議会においては、昨年来、審議会会長・専門委員で、5回の会合を開催し、現行計画の評価を行ったところで、昨年11月17日に「半世紀を迎える沖縄振興の今後の在り方について」という意見を審議会に提出するとともに、公表している。 その中では、「沖縄科学技術大学院大学は開学後大きく発展しており、今後バイオ、海洋等の分野で振興に寄与することが期待される。 」との評価を得ている。 また、本年6月9日に閣議決定された、いわゆる「骨太の方針2017」における沖縄振興の部分では、「成長するアジアの玄関口に位置付けられるなど、沖縄の優位性と潜在力を活かし、日本のフロントランナーとして経済再生の牽引役となるよう、引き続き、国家戦略として、沖縄振興策を総合的・積極的に推進する。 (中略)沖縄科学技術大学院大学の規模拡充に向けた検討や知的・産業クラスター形成、(中略)の推進を図る。 」とされている。 本稿では、開学6年となり、来春には初の卒業式も行われることになっている(平成30年(2018年)2月に開催予定)、この沖縄科学技術大学院大学(以下、略す場合は、「OIST」という。 )の最近の歩みと現状を中心に紹介したい。 1 沖縄科学技術大学院大学構想の歩み (1)第4次の沖縄振興計画における位置づけ この沖縄科学技術大学院大学の構想は、15年前(2002年)の第四次の沖縄振興特別措置法(平成14年3月31日法律第14号)第85条第2項に、「国及び地方公共団体は、沖縄において、国際的に卓越した教育研究を行う大学院を置く大学その他の教育研究機関の整備、充実等必要な措置を講ずることにより、国際的視点に立った科学技術の水準の向上に努めるものとする。 」との形で法律に姿をあらわした*1。 この法律を受けた沖縄振興計画(平成14年7月内閣総理大臣決定)では、 「第2章 振興の基本的方向」の「1 基本的課題 (3)基本課題」で、「…一方、第3次沖縄振興開発計画で新たに加えられた「我が国経済社会及び文化の発展に寄与する特色ある地域としての整備」については、サミット首脳会合の成果等を得て、我が国の南の交流拠点を目指すという施策の方向性を明確にした。 今後、世界最高水準の大学院大学等をはじめとする各種の研究教育機関の整備・充実を図るなど拠点形成に向けた強力な取組が必要である」とされた。 このため、沖縄における科学技術の振興及び我が国の科学技術の進歩の一翼を担い、また、アジア・太平洋地域さらには世界に開かれた中核的研究機関として、我が国の大学のあり方のモデルとなるような「国際性」と「柔軟性」を基本コンセプトとした新たな発想を持った世界最高水準の自然科学系の大学院大学等を核に他大学、公的研究機関及び民間企業・研究所の集積と一体となった知的クラスターの形成に取り組む。 」としている。 そして、「第3章 振興施策の展開」の「3 科学技術の振興と国際交流・協力の推進 (1)大学院大学等による科学技術の振興と学術研究・交流拠点の形成」で、「沖縄における科学技術の振興及び我が国の科学技術の進歩の一翼を担うため、また、アジア・太平洋地域さらには世界に開かれた中核的研究機関として、我が国の大学のあり方のモデルとなるような新たな発想を持った世界最高水準の自然科学系の大学院大学等を核とした大学、公的研究機関、民間の研究所などの教育・研究機関の整備充実に努め、科学技術の集積を図る」とされた。 (2)大学院大学構想の経緯の概要 (1)で既述したように、尾身幸次内閣府特命大臣が、平成13年(2001年)6月に構想を提唱し、翌年の沖縄振興特別措置法及び沖縄振興計画に位置づけられた後、OIST発足までの経緯の概要を以下に示す。 ・平成15年(2003年)12月 関係閣僚申合せ ・沖縄県恩納村に設立する ・大学が設置されるまでの間の措置として、整備法人を設立し、研究を実施する ・大学の開学については、主任研究員が50人程度に達した時点を目処とする ・平成16年(2004年)2月 先行的研究事業として4件のプロジェクト*2を選定 ・平成17年(2005年)3月 独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構法成立(全会一致) ・同年8月 シドニー・ブレナー博士(2002年ノーベル賞(生理学・医学賞)受賞)を機構の初代理事長として指名 ・同年9月 独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構設立 ・同年12月 関係閣僚申合せ ・今後7年程度以内を目途に沖縄科学技術大学院大学の実現を期する ・第1期中期目標期間(〜20年度)中を目途に、設置形態等の課題について一定の方向性を得る。 ・平成19年(2007年)3月 恩納村でキャンパス建設工事着手 ・平成20年(2008年)7月 第6回機構運営委員会 ・大学院大学の制度設計等について、「新大学院大学の青写真」を取りまとめ(長期的には300PIs*3を理想形) ・同年12月 関係閣僚申合せ ・世界の英知の結集を図るとともに、自主性と柔軟性を確保するため、設立主体は学校法人とした上で、所要の特例を設ける ・沖縄振興等の観点から、国による財政支援の制度を設け、内閣府において所要の予算措置を講じる ・平成24年度までの開学を目指す ・平成21年(2009年)7月 沖縄科学技術大学院大学学園法成立(全会一致)(平成23年(2011年)11月1日施行) ・同年9月 学園の設立委員を任命 ・平成22年(2010年)3月 恩納村のキャンパス建設地において第1研究棟及び管理棟の共用開始 ・同年7月 設立委員がジョナサン・ドーファン博士(物理学者、スタンフォード大学線形加速器センター名誉所長)を大学院大学の初代理事長兼学長予定者に選出 ・平成23年(2011年)3月 設立委員が文部科学大臣に対し、大学設置等認可を申請 ・同年10月 文部科学大臣による認可 ・同年11月 学校法人設立 ・平成24年(2012年)6月 第2研究棟の供用開始 ・同年9月 沖縄科学技術大学院大学開学 (開設している研究科・専攻は、科学技術研究科・科学技術専攻である) ・平成27年(2015年)6月 第3研究棟の供用開始 ・平成29年(2017年)1月 ピーター・グルース博士(分子生物学者、前マックス・プランク学術振興協会会長)が大学院大学の第2代理事長兼学長に就任 なお、現在平成30(2018)年度の供用開始に向け、第4研究棟の整備が進行中である。 (3)特例法である沖縄科学技術大学院大学学園法の概要 OISTについては、これまで上記(2)のような長い経緯があるが、平成20年(2008年)12月の関係閣僚申合せで紹介したように、「大学院大学は、その運営に際して世界の英知の結集を図るとともに、教育研究及び経営の自主性と柔軟性を確保する観点から、学校法人により設置される大学とした上で、当該法人の管理運営の仕組みについて所要の特例を設ける」こととされた。 したがって、基本は、学校法人として、学校教育法、私立学校法などに基づく法令の適用を受けるが、その上で、沖縄科学技術大学院大学学園法が適用されるとともに、閣僚申合せにある「法人の業務運営について、高い透明性が確保され、国民に対する説明責任が果たされる仕組みを設ける。 」あるいは「大学院大学の運営について、国と法人との間で密接な連携関係を構築する」とされたところを踏まえた運用がなされている。 実際には、図にあるような「沖縄科学技術大学院大学学園の運営体制」が構築されている。 学園法の概要は以下のようになる。 なお、法案審議において、衆議院において法案の一部に修正がなされている*4ので、カッコ内でその点については触れる。 ア)法律の目的 沖縄を拠点とする国際的に卓越した科学技術に関する教育研究の推進を図り、もって沖縄の振興及び自立的発展並びに世界の科学技術の発展に寄与する。 (沖縄の振興が追加) イ)学園の目的 学園は、沖縄において、沖縄科学技術大学院大学を設置し、当該大学において国際的に卓越した科学技術に関する教育研究を行うことを目的とする学校法人とする。 ウ)学園の業務 1)沖縄科学技術大学院大学を設置し、これを運営すること 2)受託・共同研究の実施その他の学園以外の者との連携による教育研究活動を行うこと 3)大学における研究の成果を普及し、及びその活用を促進すること 4)科学技術に関する研究集会の開催その他の研究者の交流を促進するための業務を行うこと など (学園は、経営内容に関する情報の公開を徹底することにより、業務の運営における透明性を確保するように努めなければならない旨が追加) エ)学園の事務所 学園は主たる事務所を沖縄県に置く オ)学園の理事会の運営及び役員の選任に関する特例 1)理事長以外の者をもって理事会の議長に充てることができる*5 2)理事は、優れた科学者、沖縄振興に関する有識者、大学経営に関する精通者が含まれるようにしなければならない (大学経営精通者は追加) 3)理事の過半数は外部理事となるようにしなければならない 4)監事の選任については内閣総理大臣の認可を要する など (評議員について、沖縄経済社会についての精通者、大学経営の公正性・透明性についての有識者が含まれるようにしなくてはならない旨が追加) カ)補助金 国は、予算の範囲内において、学園に対しウ)の業務に要する経費の2分の1を超えて補助できる*6。 (政府提出法案では、ウ)の業務に要する経費の2分の1を補助できる。 ただし、本法の施行日から起算して10年を経過する日の属する年度の末日までの間は、2分の1を超えて補助できる、とされていたものが修正。 ) キ)事業計画等の認可 学園は、事業計画、長期借入金及び重要な財産の譲渡等について内閣総理大臣の認可を受けなければならない 事業計画は、沖縄の振興及び自立的発展に配意されたものであるとともに、沖縄における経済の振興及び社会の発展に関する総合的な計画との調和が保たれなければならない。 (「沖縄の振興及び自立的発展に配意されたものであるとともに、」が追加) ク)国及び関係する沖縄の地方公共団体との連携 学園は、大学院大学の運営に当たっては、国及び関係する沖縄の地方公共団体と密接な連携を図らなければならない コ)検討 国は、この法律の施行後10年を目途として、学園に対する国の財政支援の在り方その他この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる (附則として追加) 図表 沖縄科学技術大学院大学学園の運営体制 図表 OIST関連予算額の推移 2 OISTの現況*7 OISTの現況は以下の通り。 (1)組織 ア)理事会 上述のように、学校法人形態をとり、ノーベル賞受賞者等の科学者、沖縄振興に係る有識者、大学経営に係る有識者等の学外理事を半数以上とする理事から構成される理事会(10名以上20名以下)が業務の決定を行い、学園の運営を進めている*8。 (学園寄附行為5条) 1)常勤理事 ・学長兼理事長 ピーター・グルース ・副理事長兼首席副学長 ロバート・バックマン(元米国国立衛生研究所・神経疾患・脳卒中研究所副所長) 2)非常勤理事(平成29年(2017年)6月末現在 16名) ・理事会議長 トーステン・ヴィーゼル(ロックフェラー大学名誉学長、1981年ノーベル生理学・医学賞受賞) ・理事会副議長 有馬朗人(元(財)日本科学技術振興財団会長、武蔵学園長、(元東京大学総長、元文部大臣)) ・安仁屋洋子(琉球大学名誉教授) ・カーティス・カラン(プリンストン大学物理学ディスティングィッシュトプロフェッサー) ・リタ・コルウェル(メリーランド大学特別教授、ジョンズ・ホプキンス大学特別教授(元米国立科学財団長官)) ・ジェローム・フリードマン(マサチューセッツ工科大学教授、1990年ノーベル物理学賞受賞) ・セルジュ・アロシェ(コレージュ・ド・フランス学長、2012年ノーベル物理学賞受賞) ・橋本和仁(国立研究開発法人物質・材料研究機構理事長) ・小谷元子(東北大学材料科学高等研究所研究所長) ・K. ヴィジェイラガバン(インド科学技術省バイオテクノロジー局局長、インド国立生命科学研究センターディスティングィッシュトプロフェッサー) ・黒川清(政策研究大学院大学アカデミック・フェロー、(元日本学術会議議長)) ・李遠哲(台湾中央研究院名誉院長、1986年ノーベル化学賞受賞) ・チェリー・マレイ(ハーバード大ベンジャミン・パース技術公共政策学教授/ジョン・A・ポールソン工学・応用科学物理学長室教授、2014年アメリカ国家技術賞受賞) ・ 尾身幸次(特定非営利活動法人STSフォーラム理事長、(元財務大臣、元内閣府沖縄及び北方対策・科学技術政策担当大臣、元経済企画庁長官)) ・尚弘子(琉球大学名誉教授、(元沖縄県副知事)) ・アルブレヒト・ワグナー(ドイツ電子シンクロトロン研究所名誉所長) イ)評議会 評議員は、21人以上41人以下で組織することとされている。 (学園寄附行為19条) ウ)マネジメント体制 理事会は、学園の理事長を選任し、理事長は学長を兼務する。 理事会は学長に日々の大学運営を委任する。 理事会は、学園の副理事長を兼ねる大学院大学のシニアレベル・エグゼクティブを任命する。 大学院大学の副学長は、学長が指名し、理事会が任命することとされている。 首席副学長(シニアレベル・エグゼクティブ)は、沖縄の自律的発展の促進を統括し、知的財産、技術移転、事業開発のマネジメントを行う。 さらに、副学長職は、研究科長、教育担当学監、副学長(アドミニストレイティブ・コンプライアンス担当)、副学長(財務担当)、副学長(施設管理担当)、副学長(広報担当)、研究担当ディーン、副学長(男女共同参画・人事担当)からなる。 (2)所在地 メインキャンパス:沖縄県国頭郡恩納村字谷茶1919-1 シーサイドハウス:沖縄県国頭郡恩納村字恩納7542 瀬良垣臨海研究施設(沖縄マリーンサイエンスセンター):沖縄県国頭郡恩納村字瀬良垣瀬良垣原656 (3)教員及び職員の数(平成29年(2017年)3月31日現在) 教員:58人*10 職員(派遣職員を除く):645人 (うち、事務局:234名、リサーチ・サポート:50名、研究ユニット:417名、研究ユニットの内数で、いわゆるポスドク(ポストドクトラルスカラー)は、149名在籍。 ) OISTでは、優秀な沖縄県出身者の雇用に努めており、28年度事業報告書によれば、28年度の採用161名に対し、34名の沖縄県出身者を雇用した(事務方21名、研究ユニット13名)。 研究者、事務系職員等のうち、24. 6%が県内出身者となっている。 (4)学生(在籍数)(平成28年(2016年)9月1日現在)) 総数134人(35カ国・地域) (第1期生 30人(17の国・地域)、第2期生 19人(12の国・地域)、第3期生 27人(11の国・地域)、第4期生 23人(16の国・地域)、第5期生 35人(21の国・地域)) 科学技術分野における世界最優秀の学生を選抜・受け入れを目指し、少なくとも半数は外国人とすることとしている。 28年9月入学の第5期の35人は、日本人学生6名、外国人学生29名との内訳であった。 なお、平成29年9月入学の第6期生として、29年度事業計画によれば、入学定員約40名で、国内外で募集活動を展開中である。 (5)研究活動などの特徴 OISTの特徴をこれまでと重なる部分もあるが、ここで整理しておく。 国内大学のモデルとなりうる様々な特徴があると考えられる。 ア)学際性 単一の研究科・専攻のみを置き、学問分野の境界にとらわれることのない学際的なプログラムを展開する。 1)学際的研究 神経科学、分子・細胞・発生生物学、数学・計算科学、環境・生態学、物理学・化学の5つの中核分野を基礎として、昨年度段階では約60の研究ユニットにより、学際的研究が行われている*11。 2)ラボローテーション 学生は、1学年次に3つの研究ユニットで学び、そのうち少なくとも1つは専門分野以外の研究ユニットを選択することが義務付けられている。 3)研究施設 同じ研究棟に、異なる複数の分野の研究室を配置している。 また、ラボ・スペースは、間切りの少ない開放的なオープンラボ形式をとる。 さらに、研究機器の共用化により、研究者の学際的交流を促進する。 4)研究者間の相互交流 研究者間の相互交流が誘発されるよう、研究棟内に共有スペースを設置している。 ラウンジにはコーヒーサーバーを設置している。 毎週木曜日、カフェに教員、学生、研究者等が集う「ティータイム」を実施するなど、異なる分野の研究者間で日常的に情報交換や議論が行われている。 イ)国際性 1)英語環境 教育のみならず、事務処理手続きまで全て英語で実施(公用語が英語)。 英語が公用語のため、事務部門は、英語資料について必要に応じて日本語に翻訳する。 職員は原則、ビジネスレベルの英語能力を前提に採用を行う。 2)国際公募 教員の採用については、大学の国際競争力を高めるために、国際公募を積極的に実施している。 大学ホームページだけでなく、国際学術誌の「Nature」や「Science」等においても公募を実施している。 また、グローバルスタンダードである9月入学の学年暦の採用により、外国人受け入れの障壁をなくしている。 学生についても、海外の大学で説明会を積極的に実施している。 研究者のうち、68. 2%が外国人で、46カ国・地域から採用されている。 3)学生支援 世界大学ランキング上位校と同様に、研究補助の対価を得るリサーチ・アシスタント報酬制度を設け、授業料の負担を補完するシステム等を導入している。 ウ)マネジメント 1)意思決定プロセス 学長(兼理事長)が強いリーダーシップを持って大学を運営し、幅広い業務を主導する。 また、重層的な組織ではなく比較的フラットな組織である。 教授会は、学長の諮問・助言機関と位置付けられている。 2)研究ユニット アソシエイト・プロフェッサー及びアシスタント・プロフェッサーを含む全教員が、独立した研究ユニットのリーダーを務め、研究ユニットを主宰している。 研究サポート体制のため、リサーチ・サポート・ディビジョンが存在し、共用・共通機器及びサービス支援を提供している。 3)テニュアトラック 優秀な若手研究者が自立して研究できる環境を提供するため、テニュアトラック制を導入している。 アシスタント・プロフェッサーは、任期7年とし、5年目に教員評価を行う。 評価の結果により、期限の定めのないアソシエイト・プロフェッサーに昇進するか、7年で任期満了するかを決定する*12。 なお、テニュアを有する教員であっても、研究資金(予算)の獲得に当たっては、原則5年ごとに、学外の評価者(海外からの評価者を中心)からなる委員会によって評価し、この結果を踏まえ研究費を決定する。 4)年俸制 優秀な教員の採用を容易にし、流動性を高めるため、教員に年俸制を導入している。 5)男女共同参画 女性が働きやすい環境を整備するとともに、男女の差なく多様な視点や優れた発想を持つ優秀な人材を確保する。 29年3月末で、教授の11. 5%、准教授の23. 3%、教員全体で16. (6)28年度の研究成果の発信・公表など OISTが発表した論文は、329。 専門書2冊、学会のプレゼン・講演数は819であつた。 28年度は、11件のOISTワークショップと7件のミニシンポジウムを開催し、そのほかにも、平成28年(2016年)11月には、第22回国際動物学会・第87回日本動物学合同大会がOISTで開催された(参加者750名、うち海外200名)。 ちなみに、沖縄県のMICE実績はほぼOIST開催案件によっているところである。 なお、OISTでは、規模拡充に当たり、平成27年(2015年)7月に、大学全体(教育、研究、運営等)に関する外部評価(ピア・レビュー)を行った。 評価委員会(パネル)は、ノーベル賞受賞者を含む国内外の著名な科学者6名で構成された。 評価結果として、卓越性を測る全ての主要な基準*13において、傑出した成果(outstanding)がみられると評価し、こうした基準に照らすと、OISTは、世界で最も高い評価を受けているトップ25大学と肩を並べているとした。 (7)知的・産業クラスター形成に向けた取組 バックマン首席副学長が統括する技術開発イノベーションセンターの28年度の実績は概要以下の通りである。 ア)11件の主要企業との受託・研究開発合意が締結された(新規6件、継続5件) イ)11件の秘密保持契約が結ばれ、新たな研究開発合意が現在考案中になっている。 ウ)外部資金獲得額は、2億3000万円となり、前年度の1億2400万円より1億円増えた。 このうち、沖縄県が資金提供した新規2件のプロジェクトの中で、外来種対策事業はヒアリ等対策であり、全国的にOISTの研究成果の一端が紹介された。 また、JST(国立研究開発法人科学技術振興機構)のSTARTに、微生物燃料電池を用いた新規エコ排水処理システムの開発が採択された。 OISTでは2回目となる。 さらに、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構と、水産物の国際協力に打ち勝つ横断的育種技術と新発想飼料の開発をテーマに共同研究(5年)が開始された。 エ)特許出願数等は、出願数86件(前年度55)、登録数22件(同6)を見込んでいる。 オ)Proof of Concept(概念実証)プログラムは、研究における発見を商業化する際に生じる技術面・資金面のギャップを埋め、商業化に橋渡しすることを目的とした産学連携プログラムである。 研究テーマを学内公募し、採択テーマをOISTとして積極的に支援するもの。 28年度に7つの新たなプロジェクトが採択され、進行中のプロジェクトは12となった。 カ)OISTにおいては、今後のスタートアップ企業等が利用する、キャンパスの近くのインキュベーション施設設立の必要性について検討を開始している。 なお、OIST研究からのスピンオフ事例としては、平成26年(2014年)6月に設立された、沖縄プロテイントモグラフィー株式会社がOIST発ベンチャー第1号として知られている。 構造細胞生物学ユニット代表のウルフ・スコグランド教授が開発したタンパク質等の分子構造の3次元可視化技術を活用したプロテイントモグラフィー技術により、その解析結果を製薬企業に提供する事業である。 キ)平成29年3月に、OISTは、研究成果等を地域社会に円滑に還元すること及び緊密な情報交換等を行なうことにより沖縄地域の産学連携を推進し、地域企業及び地域経済の活性化に資することを目的に、沖縄振興開発金融公庫と「産学連携に係る協力推進に関する覚書」を締結した。 おわりに OISTについて、平成28年度の監査報告書が示唆深い*14。 監事は、「監査に当たっての基本的な考え方」として、「本学は開学から5年を経過し、また、これまで累次にわたる監事監査及び内部監査も実施されてきた。 その基本的運営について見ると、今後の更なる拡張を見据え、組織の在り方及び業務の内容において、これに如何に円滑に対応していくかという一定の課題を残しつつも、運営に求められる基本的な機能という側面からは、安定度を増してきている。 」とする。 その中では、勤務時間管理、人材不足への対応、施設管理プロセス、安全・防災体制などが取り上げられている。 そして、報告の締めくくりに、「縦割りの弊害」と、「適時性の喪失」について警鐘を鳴らしている。 一方、主要紙の論説委員等が、OISTを訪問し、関係者や学生と意見交換などを行なった成果が、いくつかの記事になっている*15。 朝日新聞7月7日付朝刊の社説余滴で、大牟田透論説委員(科学社説担当)は、「「科学の楽園」の未来は?」との論説を掲載し、「小粒だが、輝きは海外で先に知られ始めた」という。 また、「海外の一流大学と遜色ない処遇や研究環境を支えているのは、実は日本政府だ」とし、「民間資金やベンチャーの収益で、政府頼みから脱却する道筋をつけられるか。 「最後の楽園」の一瞬の輝きに終わるか。 実験の10年は折り返しを過ぎた」とする。 日経サイエンス9月号で、日本経済新聞滝順一編集委員は、「沖縄科技大、正念場の6年目」と題する論考を掲載している。 小見出しは、「グルース新学長登板、ドイツ流の地元振興・ひとづくりに注力」とある。 「壁がない学際的な環境」や研究成果を評価する。 「課題もはっきりしてきた」とし、「個々には優れた研究があるが、大学として世界の科学研究における拠点となりうる存在感はまだない。 」とし、学長の考えに沿って、増員する場合、「どの分野を手厚くするかが重要になる」と指摘する。 「OISTとしての強みを前面に出す戦略が必要な時期だ」と指摘する。 「新学長への交代とともに研究力強化に加えて、イノベーション創出や産業振興にも本腰を入れる方向に転進したかにみえる」という。 そして、「設置の根拠法の附則には10年をメドに「財政支援のあり方を検討する」とある。 これから5年が正念場であるのは間違いない。 」と締めくくる。 たまたま、8月中旬沖縄に出張したおり、ジュンク堂書店那覇店で本を購入した際、「OISTうちなーんちゅ科学者たちによるサイエンストーク」のチラシを貰った。 9月から毎月1人沖縄出身でOISTに所属する科学者がジュンク堂書店で夕方1時間ほど話をするというものだ。 筆者のいう「科学的思考」を社会にきちんと埋め込むことができるかは、イノベーションにおいて大きな課題である。 そのような中で、このような地道な取組が沖縄県民に徐々に浸透してうねりとなり、まわりまわって、OISTが沖縄経済をけん引する、日本の代表的なイノベーションの拠点の1つになることを大いに期待したいところだ。 (ありうべき誤りは筆者に帰する。 OISTに関する資料については、内閣府沖縄振興局沖縄科学技術大学院大学企画推進室の多大なるご協力を得た。 記して感謝したい。 ) プロフィール 渡部 晶 前内閣府大臣官房審議官(沖縄政策担当及び沖縄科学技術大学院大学企画推進担当) 1963年福島県平市(現いわき市)生。 京都大学法学部卒。 1987年大蔵省入省。 福岡市総務企画局長、財務省大臣官房地方課長、(株)地域経済活性化支援機構執行役員などを経て、本年6月28日より沖縄振興開発金融公庫副理事長。 いわき応援大使。 月刊事業構想9月号に「地域活性化のための戦略と構想:「自由貿易」と分業が基本」を掲載。 *1) 学校法人沖縄科学技術大学院大学学園の理事である尾身幸次氏の著書「天風哲学実践記」(2010年12月 PHP研究所)の「20 沖縄大学院大学構想と「理想の摩訶力」」(P271以下)には、2001年4月に科学技術政策担当と、沖縄振興・北方対策担当大臣を任命された当時を回想し、「(前略)本来、科学技術と沖縄対策は別に何の関係もなかった。 さてその一見全く関係のない二つの担当大臣をやることになって、どのように仕事をしようかと思い、考えついたのが沖縄の大学院大学構想である。 というのは、沖縄は観光地としては非常に有名であるが、いわゆる近代産業は発展していない。 そして1人当たりの国民所得も日本一低い。 その沖縄を将来にわたってどう発展させていくか、そういうことをいろいろ考えながら、かつ一方では科学技術で日本を創り直そうということを考えていた私がそれならば二つのアイディアを結びつけて、沖縄に科学技術系の大学院大学を作ろうと思いついたのである。 (以下略)」とある。 実際、尾身氏自らが平成13年(2001年)6月に「沖縄科学技術大学院大学構想」を発表したことに端を発する。 *2) その1つであるマリンゲノミックスユニット(代表研究者:佐藤矩行)は、沖縄に生息するサンゴ、コユビミドリイシの全ゲノムを世界で初めて解読。 2011年7月25日(日本時間)発行の英国科学雑誌Natureのオンライン版に掲載。 「次世代シーケンサー」と呼ばれる、DNAを超高速・大量解読可能なゲノム解読装置が、短期間での解読を可能とした。 沖縄がサンゴ研究のメッカとして認知される成果となった。 *3) 主任研究者を指す。 Principal investigatorの略。 *4) 自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党の3会派共同提案による修正案 *5) ボード(理事会)の議長を、法人の長である理事長とすると、ボードを意思決定機関として、プレジデント(理事長・学長)の選任等を含む重要事項の決定を行うという、大学院大学で想定する運営体制とはならないことから、理事長以外の理事を充てることを可能するよう法制上の手当てをしたもの。 なお、米国においては、研究大学はボード(理事会)を意思決定機関として、ガバナンスとマネジメントを分離する運営が行われており、これは我が国の学校法人制度に類似しているとされる。 *6) 図表「OIST関連予算額の推移」を参照のこと。 平成17年度から平成29年度当初予算まで、累計で1787. 4億円の予算が投下されてきた。 平成21年7月1日の参議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会における法案質疑で、清水治沖縄振興局長(当時)は、今野東委員(民主党)の質疑において、「充実した研究費や研究設備も重要でございます。 そういう面でいいますと、機構の主任研究者1人当たり現在の研究費等の規模で二億円程度となってございます。 開学後も同程度の規模で、そのぐらいの研究環境を提供しながらやっていく。 」と答弁した。 国内大学に比して、極めて寛大な額であり、これが、OISTと一般の国立大学を比べた際の、一番の違いかもしれない。 事業計画、事業報告書、監査報告書などが掲載されている。 *10) 29年度予算で、5名の増員が認められ、65名の定員となったところであり、29年度の事業計画では、化学、生命科学、物理学、海洋科学の分野で卓越した教員の採用を目指すとしている。 *11) 神経科学の研究ユニットと物理学の研究ユニットの共同研究により、鳥の記憶に関する論文がScience誌に掲載された。 *12) 28年度は、6つの研究ユニットのレビューが行われ、2つのユニットが「世界トップ」、4つのユニットが「世界クラス」(分野で上位10%に入る)というポジティブな評価を外部評価委員会から得た。 審査委員会は、2つの研究ユニットについては規模拡大を、4つの研究ユニットは同規模での研究継続を推奨。 研究ユニットのレビューの結果、3名の准教授が教授に昇進。 *13) 以下の8つの基準。 1.物理的キャンパスのインフラ整備、2.管理運営体制及びプロセス、3.学術プログラム及び教員の採用、4. 博士課程、5. 機器、6. 研究成果に達するまでの経過、7. 技術移転、8. *15) 経済小説の「ハゲタカ」や直木賞候補作となった「コラプティオ」などで知られる人気作家の真山仁氏は、週刊エコノミストの連載「アディオスジャパン」第58回(7月4日号)でOISTを取り上げ、「リゾート村にそびえる象牙の塔の違和感」との辛口の論考を載せている。

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沖縄科学技術大学院大学、独創研究で「東大超え」:日経ビジネス電子版

沖縄 科学 技術 大学院 大学 学園

全5980文字 前代未聞の構想 有馬氏が振り返る。 「教員の半分は外国人で、英語を公用語にした新しい大学を作りましょうと尾身さんに話したら、驚いていましたね」。 無理もない。 当時の日本では英語を公用語にする大学の創設は前代未聞。 当初は国立大学の琉球大学を手直しする案もあったが、東大総長時代に既得権益層が分厚い国立大学で改革する難しさを知る有馬氏が「どれだけ事情に詳しい人がやっても、国立大学を変えるには10年はかかる」と主張したこともあって、大学を一から作る方向性が固まった。 尾身氏は新設大学のコンセプトを決めるため、ノーベル賞受賞者を中心とする世界の著名科学者を訪ね歩いたという。 「あなたが今、大学を作るとしたら、どんな大学ですか」「あなたの研究生活を振り返って、良かった点、変えてほしかった点を教えてください」。 そうやって聞き取った結果、理想の大学の条件が見えてきた。 「国際性」や、異なる分野の研究を組み合わせる「学際性」を持ち、長期視点に立って研究費を使える「自由度」が高いことだ。 大学を率いる人材にはこだわった。 企業でいえば、取締役会に相当する理事会を構成する19人のメンバーは世界トップクラスの研究者が名を連ねる。 大学創設にかかわったノーベル医学・生理学賞受賞者である利根川進・米マサチューセッツ工科大学(MIT)教授ら国内外の著名研究者の力を借りながら招いた準備機構トップはノーベル医学・生理学賞受賞者の英国人、シドニー・ブレナー氏。 17年に就任した2代目学長のピーター・グルース氏も、これまで30人以上のノーベル賞受賞者を輩出してきた世界有数の研究機関、独マックス・プランク学術振興協会の会長を10年以上務めた人物だ。 世界的に名高い研究者に引き寄せられるように、OISTには優秀な教員や学生が集まる好循環が生まれている。 19年には「グルース学長がいる研究機関に行きたい」とマックス・プランクから4人の学生が入学。 量子システムを専門にするデニス・コンスタンチノフ准教授も「世界的に優れた成果を挙げた研究者がたくさんいることに魅力を感じた」と話す。

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沖縄科学技術大学院大学とは:沖縄政策-内閣府

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全5980文字 前代未聞の構想 有馬氏が振り返る。 「教員の半分は外国人で、英語を公用語にした新しい大学を作りましょうと尾身さんに話したら、驚いていましたね」。 無理もない。 当時の日本では英語を公用語にする大学の創設は前代未聞。 当初は国立大学の琉球大学を手直しする案もあったが、東大総長時代に既得権益層が分厚い国立大学で改革する難しさを知る有馬氏が「どれだけ事情に詳しい人がやっても、国立大学を変えるには10年はかかる」と主張したこともあって、大学を一から作る方向性が固まった。 尾身氏は新設大学のコンセプトを決めるため、ノーベル賞受賞者を中心とする世界の著名科学者を訪ね歩いたという。 「あなたが今、大学を作るとしたら、どんな大学ですか」「あなたの研究生活を振り返って、良かった点、変えてほしかった点を教えてください」。 そうやって聞き取った結果、理想の大学の条件が見えてきた。 「国際性」や、異なる分野の研究を組み合わせる「学際性」を持ち、長期視点に立って研究費を使える「自由度」が高いことだ。 大学を率いる人材にはこだわった。 企業でいえば、取締役会に相当する理事会を構成する19人のメンバーは世界トップクラスの研究者が名を連ねる。 大学創設にかかわったノーベル医学・生理学賞受賞者である利根川進・米マサチューセッツ工科大学(MIT)教授ら国内外の著名研究者の力を借りながら招いた準備機構トップはノーベル医学・生理学賞受賞者の英国人、シドニー・ブレナー氏。 17年に就任した2代目学長のピーター・グルース氏も、これまで30人以上のノーベル賞受賞者を輩出してきた世界有数の研究機関、独マックス・プランク学術振興協会の会長を10年以上務めた人物だ。 世界的に名高い研究者に引き寄せられるように、OISTには優秀な教員や学生が集まる好循環が生まれている。 19年には「グルース学長がいる研究機関に行きたい」とマックス・プランクから4人の学生が入学。 量子システムを専門にするデニス・コンスタンチノフ准教授も「世界的に優れた成果を挙げた研究者がたくさんいることに魅力を感じた」と話す。

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